――学校を爆破する。
そんなことをネットに書き込もうとしているものだから、僕はあわてて麻里を制止した。
「ダ、ダ、ダメだよ、それを掲示板に投稿したら!」
リターンキーを押そうとする麻里の右手を掴むと、彼女は静かに振り向いた。
「だって今日はエイプリルフールじゃない」
「だけど、そんなこと書いちゃダメなんだよ」
いったい彼女は家庭でどんな教育を受けてきたのだろう。
あ然とする僕の表情を眺めながら、麻里は静かに言う。
「じゃあ、警察を爆破、にしておく」
「余計ダメだって!」
つい、声を荒らげてしまった。
しゅんとなった彼女は、小さな声で僕に呟く。
「犬小屋は?」
「それなら……ってダメダメ、それもダメ!」
「じゃあ、何を爆破させればいいの?」
「うーん……」
上目遣いで訊かれると困ってしまう。
エイプリルフールに爆破予告していいものってなんだろう?
腕を組んで僕は考える。
「芸術とか?」
その答えを聞いて素早くパソコンに向き直った麻里は、ポチっとリターンキーを押した。
500文字の心臓 第130回「ありきたり」投稿作品
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