可愛いあいつはモンブラン(後編)
2011-03-01


「でも、それじゃあ、先週の俺の苦労はどうなるんだよ。ちゃんとお題に従って段取りを組んだんだぞ。わざと『吹雪』を降らしたり、『たゆたう』を使って俳句を作ったり……」
 俺が声を荒らげると、部長が怪訝な顔をする。
「ちょ、ちょっと、勉。それってどういうこと?」
 しまった! つい口が滑ってしまった……。
「部長先輩。わかりましたよ、私。ヒントは一つ前のお題です」
 げっ、ランちゃん。普段は天然っぽいのに、こういう時だけ鋭いのはどういうことだ!?
「一つ前のお題って……?」
 部長がランちゃんの方を向く。
「私、見ちゃったんです。チャットをやってるサイトで。一つ前のお題に『でっへへへへ』とか『なんかすごいのきた!』ってのがありましたよね。だから私はこんな性格にされちゃったんです。本当は普通の女の子なのに。この日本のどこに『でっへへへへ』って笑う女の子がいますか? ねえ、勉先輩」
 だ、だから、それは……。
「そうか。だから私も『なんかすごいのきた!』って変なメールを書いちまったのか。おい、みんな勉の仕業なのか」
「い、いや、お、俺は……」
「正直に言わないと、先輩には『黄昏』てもらいますからね」
「ランちゃん、ナイスアイディア。お題的にもバッチグーだわ」
「…………」
 すっかり困った俺がうつむくと、しばらくしてランちゃんが笑い出した。
「なーんて、先輩。本当に黄昏ないで下さいよ〜。私、本当の本当は天然なんですからぁ。でも責任はとって下さいよね。ちゃんと私にお題小説を教えてくれるって」
「そ、それって……」
「はい、私、この部に入部します。だって楽しそうだもん」
「ははははは。新入生にやられたな、勉」
 俺がぽかんとしていると、ランちゃんは部長から渡された入部届けに必要事項を書き始めた。
 まあ、とにかく良かった。とびきり明るい新入部員が入ってくれて。
 さて、来週のお題って何だったっけ?



即興三語小説 第95回投稿作品
▲必須お題:「ハンバーグ」「二度見」「あてもなく」
▲縛り:「オリジナリティ溢れた前編のあらすじをつける(任意)【ただし、前編(第95回分)未投稿の場合はこの縛りはないものします】」
▲任意お題:「厳重に密封」「ブラックホール」「黄昏」「歪んだ秒針」

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