セーブポイント
2022-01-19


森の装備なら、葉や木などの植物素材と森の魔法が必要で、水の装備なら綺麗な水や渓流や滝で採取したマイナスイオンと水の魔法が必要となる。金属が手に入れば武器や防具を強化できるし、巨大生物から得られる素材も重要だ。
 魔法は種類が限られているものの、素材は広大なマップに無数に存在する。だから装備も様々な種類を思いのまま自由に造ることができる。
 が、造れるのは装備や武器、防具といった外側に纏うものだけ。その下のインナーは、デフォルト設定のまま変更することができない。

「これってボクサーショーツ? ていうか、ただの短パンだよね」

 美音は一生懸命素材を集め、森の魔法も取得した。そして短めのスカートが魅力的な森の妖精風の可愛らしい装備を造り出した。
 早速、その装備を身に着けて巨大生物を狩りに出掛けてみる。
 彼女が操る女性アバターは双剣を駆使し、森の妖精ごとく軽やかに飛び回りながら巨大生物にダメージを入れていく。時には宙返りをしながら、時には高速スピンで手数を稼ぐ。
 しかし、その時にひらめくスカートからチラリと見えるインナーに、どうしても興覚めしてしまうのだ。
 設定としてはボクサーショーツのようなのだが、どう見ても短パン。それはまるで、とある有名アニメの少女――電気の力でコインを高速で飛ばす彼女のように。

「DLCも、可愛いの無いしね……」

 ゲームの設定上、インナーを自由に造ることはできない。
 それでもインナーを変更したいというプレイヤーのためには、DLCが用意されていた。
 が、DLCで手に入るインナーはハイレグだったり、Tバックだったり、男性好みのものばかり。森の妖精風装備に合う可愛らしいインナーは見当たらない。

「まあ、ぱんつの可愛さを競うゲームじゃないし」

 白亜大戦は面白い。
 インナーが自由に造れなくても、それを忘れさせてくれる楽しさで溢れている。
 それに短パンが気になるのは、スカート丈が短い装備を装着した時だけ。スカート丈が長かったり、パンツスタイルやごつい防具を身に付けた時は全く気にならない。

 不満の種火を残しつつも、美音はそう割り切ってゲームを楽しんでいた。
 ところがだ。
 種火を再燃させるような出来事が起きた。
 それは、巨大生物を倒すために何人かと共闘した時のこと。メンバーの中に一人、水色の装備で身を包んだ女性アバターがいた。レイピア使いの彼女は身のこなしが軽く、跳躍や宙返りを繰り返しながら攻撃を当てている。まるで美音のアバターのように。
 その水色の彼女が宙返りをした時、チラリと露わになったインナーに美音の視線は釘付けになった。

「えっ、縞ぱん!?」

 見間違いではない。それは確かに白と水色の縞々模様だった。
 そしてそのインナーは、悔しいほどに彼女の水色装備に合っていたのだ。
 刹那、インナーについての不満が心の底から溢れ出してくる。

「あれが欲しい! でも縞ぱんってDLCには無かったはず」

 DLCのインナーリストを必死に思い出す。
 一時期、毎日のようにリストを眺めていた美音は確信した。
 あのプレイヤーのインナーはDLCではなく、魔法と素材で造られた一点ものだと。

「でも、どうやって!?」

 それが謎だった。
 というのも、魔法と素材でインナーを造るシーンがこのゲームには一切登場しないからだ。
 ゲームにログインすると、自分が操るアバターは最後にセーブした場所で出現する。ほとんどの場合、セーブした時と同じ装備で。
 その時も、インナーを変更するというメニューは登場しない。

「seaportさんか。覚えたわ」

 美音は記憶に刻み付ける。水色装備の女性アバターに表示されているプレイヤー名を。
 ――seaport。
 そのプレイヤー名は、美音にとって別の意味で印象づけられていた。


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