ダンスの高校
2006-02-20


僕らの母校は、ダンスの高校だ。
リズムに乗って弾け飛んだ汗は、校庭の土に深く染み込み、
熱い季節が訪れるたびに、生徒の心をうずうずさせる。

「文化祭の後夜祭は、ダンスをやります」
新入生となった僕らは、そんな説明に幻滅してしまった。
高校生にもなってダンスをやる羽目になるとは、
思ってもみなかったからだ。
後夜祭には出たい。けれどダンスを踊るのは嫌だ・・・
葛藤する心をよそに、季節は夏に近づいていった。

そんなある日、先輩が目を輝かせて部活にやってきた。
「ダンスの振り付けを覚えてきたよーっ!」
なんでもこの振り付けは、実行委員会のオリジナルらしい。
曲も、最近のヒットチャートから選ばれている。
スカートをひらひらさせながら、楽しそうにダンスを踊る先輩。
その笑顔に見惚れているうちに、
いつしか自分もダンスを踊るようになっていた。

踊ってみて初めてわかったことだが、ステップが結構難しい。
高校生が作るものだからと馬鹿にしていたのを反省する。
実行委員も、さぞかし検討を重ねたことだろう。
簡単すぎると飽きられる。難しすぎると誰も踊れない。
そして何より、格好良くなければ高校生の心はつかめない。
僕らが踊るダンスは、僕らの心を確実に捉えていた。

最も驚いたのは、後夜祭でみんながダンスを踊っていたことだ。
それはまるで、ダンスという伝統を作った先輩方の汗が、
何か得体の知れない雰囲気となって校庭に立ち昇り、
僕らの体を動かしているかのようだった。

一昨年、母校のダンスドリル部は全米の大会で優勝し、
名実共にダンスの高校となった。
僕らの流した汗が、部員達の心をうずうずさせたのだとしたら・・・
あの校庭にはきっと、そんな伝統が息づいているのだろう。


へちま亭文章塾 第6回「ダンス」投稿作品
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