2010-07-17
「さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!」
市場は今日も賑わっているようだ。
「今日はマイホームも安いよ。大出血サービスだ!」
何だって? マイホームが安いって? 借り暮らしの俺は激安マイホームという文字に弱い。
今借りている家が手狭になってきたので、新しい家を探していたところだ。
「おい、オヤジ。激安マイホームって値段はどれくらいなんだ?」
「五円でどうだ?」
えっ、五円! そいつは安い。
「本当にちゃんとした家なんだろうな。オヤジを疑うわけじゃないけど、大事なことなので一応聞いておくぞ」
「実は輸入物なんだ。だから安いんだが、強度とかはしっかりしてるぜ。見てみるか?」
「ああ」
オヤジは俺を裏庭に連れて行く。すると良さそうなマイホームが3つ並んでいた。確かに物は良さそうだ。
「決めた。こいつをくれ」
俺は右端の家を選ぶと、店のオヤジに五円を払った。
「それにしても、イカリング五個で家が買えるとは……」
いい買い物をしたと、俺は上機嫌でマイホームを抱えて家族のもとに帰る。
「おーい、息子よ。マイホームを買ってきたぞ。ほら、最近狭くなったって言っていただろ」
「わー、パパ、ありがとう」
子供の喜ぶ顔はいつ見てもいいもんだ。
息子は早速、今使っている家を出て、俺が買って来た家に入る。
「パパ。この家ってなんか臭い! ヤダよ、こんな家」
息子の叫びを聞きつけて妻もやってきた。
「あんた、これってカタツムリの殻じゃない。また騙されたのね、情けないわ」
ちくしょー、あのオヤジ、騙しやがって!
我々ヤドカリにとって、カタツムリの殻はヌメヌメしていて苦手なんだ……
一時間で書く即興三語小説
▲お題:「大事なことなので」「借り暮らし」「大出血」
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