水道水がものすごく美味しい町があると聞いて、早速俺は車を飛ばした。
町の境界の峠には、土産物屋があって水汲みに必要な道具が並んでいる。
ポリタンクが千円、柄杓が五百円、そして水道の蛇口の栓が〓〓えっ、一万円!?
「ここで買っておいた方が無難じゃよ」
冗談じゃない。一個一万円もする蛇口の栓なんて聞いたことも無い。
俺は店主の忠告を無視して車を走らせた。
まずは公園。ここで水道水を拝借しよう。
持参したポリタンクを持って水飲み場まで行くと、案の定、蛇口の栓が無い。これは想定内とレンチを取り出してみたが、複雑な形でレンチが使えない。
「お兄ちゃん、蛇口の栓、貸してあげようか?」
いつの間にか子供達が俺を囲んでいる。皆、首からペンダントのように蛇口の栓をぶら下げていた。
満面のニヤニヤ顔から判断して、とてもタダとは思えない。
「十秒千円で」
おいおいそれはガキの小遣いにしちゃ高すぎるだろ。
しかし、どこに行っても蛇口の栓は外れていた。
途方に暮れた俺は急な腹痛に襲われ、コンビニのトイレに駆け込む。無事に用を済ませて水を流そうとすると〓〓タンクの上の蛇口の栓が無い。そして横には、一個二万円の蛇口の栓の自販機が鎮座していた。
500文字の心臓 第99回「外れた町」投稿作品(
☆逆選王)
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