「二月二十八日のシングル、空いてる?」
予約のため俺は窓口に駆け込んだ。
「はい。まだ空きがあります」
お姉さんがニッコリ笑う。よかった、まだ空きがあって。
「じゃあ予約頼む。三泊で」
「えっ?」
驚いた顔をするお姉さん。もしかして翌日以降は予約で一杯なのだろうか?
しまった、もっと早く来ればよかった。頭の中が真っ白になる。
「空いてないの? 翌日以降」
「いえ、二月二十九日も三月一日も空いておりますが……」
なんだよ、驚かせるなよ。
だったらさっきの反応は何だ? まさか、うるう年だからシステムが対応してないってことはあるまい。それとも――
「同じ場所が取れないとか?」
「いえ、三日間とも同じ場所を予約することはできます」
「だったらそれで頼むよ」
俺は呆れる。
この窓口の対応はなってない。お客を不安にさせてどうするんだよ。
心配になった俺は、念のために確認する。
「三泊だから、その間は荷物を置いたままでもいいんだよね?」
するとお姉さんは再び表情を曇らせた。
「いえ、それは困ります。規則ですので」
やっぱりダメだ。今度、会社に意見してやろう。
「ななつ星とかなら可能でしょうけど、これは普通の寝台列車ですから……」
500文字の心臓 第146回「一夜の宿」投稿作品
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